事業承継とDX

日本の高齢化の進展に伴い、経営者の高齢化の進む中で、中小企業の事業承継は社会的な課題として認識されています。(中小企業白書 2022  第7節 経営資源の有効活用)

ここで、事業承継を「経営者が高齢化したからやむおえず行う」というとらえ方ではなく、「経営革新のチャンス」ととらえてDXにチャレンジしてはどうでしょうか?

DXを成功させるためには、既存ビジネスモデルを顧客価値の視点からデジタルを活用して再定義することが欠かせません。場合によっては現在のビジネスプロセスや、過去の成功体験を否定しなければならない場面も登場するでしょう。そのつらい決断を高齢な経営者に求めるのは酷というものでしょう。

ただし、ここで注意です。DXとは過去を完全に否定し、作り変えることではないとわたしは考えます。過去を完全に否定することは、その企業の存在価値すら否定することなるからです。

そこでわたしがお勧めするのが記録の見直しです。記録を集計するとデータになります。そのデータを集計してビジネス革新につなげるのがすなわちDXなんです。

具体的にどうするかですが、主に以下のような観点が重要です。

    • 経理情報
    • 顧客情報
    • 社会情報(公共情報、競合情報)

個々に見ていきましょう。

【経理情報】

お金は企業の血液です。お金の流れを分析すれば、その会社のビジネスを多方面から見える化することが可能です。ただし、単に数値を見ているだけでは視える化したことにはなりません。各種回転率を計算して時系列でグラフ化したり、同クラスの同業他社と比較することで、様々な気づきをえることができます。

経理情報は決算のために、整理された情報が長期にわたり保存されている可能性が高いので、過去の社内の状況や社会状況と見比べながら会社のビジネスの変遷をたどるのに最適です。

【顧客情報】

コンシューマ向けビジネスと、企業(組織)向きビジネスでは得られる情報も分析の仕方も大きくことなります。

いずれにせよ、意識して取得しないと得られないのが顧客情報であり、その情報の量と精度がビジネスの成否に大きく影響することから、DXの主戦場は、いかに顧客情報を取得し、活用して顧客価値につなげるかがビジネス革新に直結すると言われています。

顧客の状況を、データをベースに見える化し、顧客が持つ課題や期待をそこから読み取り、それに答えることで、あらたなビジネス価値を創造するのがDXなのです。

【社会情報(公共情報、競合情報)】

現在は情報公開の時代です。政府や自治体は人口動態を含めた様々な情報をデジタル情報として公開しています。また、多くの企業・機関がアンケートを含めた社会の様相を示す情報を提供しています。

そうした情報を取得・整理して社会の未来を予測し、ビジネス革新のヒントをつかみましょう。

いま仕事で必要とされるコミュニケーション能力とは

単に誰とでも話せるとか、会話を弾ませられるのでは、コミュニケーション能力としては、あまり有用とは言えません。

わたしは、仕事に役立つ広義のコミュニケーション能力として以下の3つをとりあげたいと思います。

1.傾聴力

2.伝達力

3.コミュニケーションマネージメント

1.傾聴力

「聴く」というのは単に情報として、相手の言った情報を受け取ることではありません。相手に”聴く意思”を伝える姿勢を示したり、

話を最後まで聴く。質問により相手の話を引き出すなど、様々な力が必要です。

会話をコントロールするのは、話手ではなく聴き手なのです。

傾聴力、それは奥深く、コミュニケーションの最も重要な力です。

2.伝達力

『聴く」力に対して、ここでは、話手が「伝える」力を「伝達力」としました。

言葉は情報を伝える方法として不完全です。なぜなら、言葉はシンボルであり、人がその言葉を意味に変換するのは、過去の体験や知識によるしかありません。そして、人それぞれ知識や体験が異なる以上、意味がストレートに伝わることなどあり得ないのです。

そのため、できるだけ正しく意味(伝えたい事柄)を聴き手の中に再現するためには、聴き手が持っている知識や体験を想像し、それに合わせた言葉を選ばなければなりません。

また、相手にこちらが希望する行動を促すためには、相手の感情に訴える演出や視覚化、論理的な構成が必要です。

優れた話者は、優れたプロデューサーなのです。

3.コミュニケーションマネージメント

仕事がルーティンワークからプロジェクトへと比重が移る現代において、いかなるプロジェクトにおいてもコミュニケーションマネージメントが重要な要素になりました。

以前なら、計画をしっかり立てさえすれば、あとはその計画を実行すればよく、ステークホルダーとのコミュニケーションは報告・承認が主でした。

しかし、現在の、変化対応型のアジャイルプロジェクトでは、コミュニケーションコントロールがプロジェクトの成否を分けます。

誰と、どのような頻度で、どのような内容をコミュニケートするのか?そのコミュニケーションの質が、プロジェクトの質を直接的に左右してしまうのです。

 

一般に”コミュニケーション力が高い”と言われる人々であっても、これらの能力をバランスよく持つのは容易ではありません。しかし、これらは才能ではなく技術です。正しく学び、訓練すれば、誰でも能力が向上します。

変化が激しい現代社会を乗り切るために、是非ともコミュニケーション能力の向上に励まれることをお勧めします。

DXって何だろう

近年はシステムといえばDXという用語であふれています。
しかし、その意味するところはバラバラであるにもかかわらず、”DXをすれば成功する”かのようなロジックが広まっているのが気になっています。

巷で言われる”DX”の成功物語は、本質的には”顧客の見える化”であったり、”顧客にとっての新たな価値の創造”であったり、”ビジネスプロセスの革新”などの、成功要因がしっかりあって、その手法に”デジタル技術(データ活用)”があったことで、”DX事例”として取り上げられたものです。
デジタル技術やデータ活用はあくまで”道具”であることを忘れてはなりません。

DXとは、自らの顧客、ビジネスプロセス、顧客価値を問い直す過程で、”データ”や”デジタル技術”が道具として利用価値が高いので、それを使いましょうという意味でとらえるのがよいと考えます。


DXを推進する際は、デジタル技術から入るのではなく、まずは自らの顧客やビジネスプロセス、顧客価値の問い直しから始めることが大切です。その際は、会社で働く従業員が、日常のタスクから離れ、上記テーマについて”対話”をしながら考えることが重要です。
検討の過程で、現状を見える化したり、革新的な価値を実現する段階で、デジタル技術やデータを登場させれば、それは素晴らしいDX事例につながっていくでしょう。

データドリブン経営の要諦

DX(デジタルトランスフォーメーション)の一つの側面として、”データドリブン経営”というものがあります。
これは簡単に言うと”データを活用して経営をする”という意味になりますが、実際にこれを行うには様々なポイントがあります。
ここでは3つのポイントを取り上げます。
 1.経営の本筋は”顧客提供価値の増大”ですから、顧客価値につながる情報をどうやって数値化するか?
 2.その数値は客観的事実か?
 3.データ連携は取れているか?

 

1. 顧客提供価値の数値化

これまで数値化が難しかった領域で、技術の進歩により急速に数値が取得できるようになりました。
提供するのが料理であれば、素材の糖度などの数値や栄養価やある種のおいしさなどの数値化が進みました。
他にも人の喜び具合や、人の行動、様々なものの老朽化の度合いなど、それまで考えられなかったようなものまで数値化が可能になってきています。
技術が日々進歩しているために、新たな数値が次々と登場しており、自分のビジネスに対して的確な数値を取得し、生かした者が、既存のビジネスルールを覆して市場を席捲するといった状況があらゆる業界で起こっています。
頭の柔軟さと、想像力が生き残りのカギを握ると言えるでしょう。

2. その数値は客観的事実か

様々な数値が得られるのはいいのですが、同じ数値であってもその意味合い変化するものも多いのが現状です。
例えば、グルメサイトや、ショッピングサイト評価数値は、当初は素直に顧客満足を数値化するものでしたが、その価値が増大するにつれ、見返りのためにバイアスのかかった評価をしたり、個人的な感情による評価が数値をゆがめる事象が増えてきました。
数字はうそをつかない”などと言われることもありますが、数値が意味する事実をどの程度反映しているかは、常に意識しておかないと、いつの間にか数値事実かけ離れることもあることに気を付けましょう。

3. データ連携はとれているか?

ネットの記事を見ていると、DXの流行りに乗って、このシステムを入れれば経営数値現場数値連携させて、データドリブン経営が達成されるといったニュアンスの記事をよく見かけます。
しかし、実際のオフィス現場では、データはあるのに連携できない事例がいかに多いかに驚かされます。でも、多くの場合それは当たり前なのです。なぜなら、それらのデータを生成しているシステムは”その業務を自動化、最適化”するために設計されるためです。
例えば企業が顧客となるビジネス(BtoB)では、”顧客コード”一つとっても、営業の現場では見込み顧客なので”会社”単位ですが、経理では”請求先”単位が必要で部署別拠点別で管理しなければならないかもしれません。売り切り系のビジネスと、サブスクリプションではさらに顧客の捉え方が変わります。それぞれで顧客を定義するとしたら、コード体系が異なっていても不思議はありありません。体系考え方が違うデータを連携させるのは容易なことではないのです。
これを解決するには、部署システム単位ではなく、会社業界としてのデータ体系の定義が必要です。これが”マスターデータ”という考え方です。これは、組織内のデータを”会社の財産”として再定義し、会社のトップが個別の業務ユニットとは独立させた形で定義扱い設計・維持する取り組みが欠かせません。
 
 
日本ではまだまだ”データドリブン経営”の本質が理解されておらず、BIのシステムを入れれば会社全体見える化できると思っていたり、各組織に”データを出せ”と一方的号令をかける経営者が多いのではないかと思っています。(欧米ではトップにMBA取得者が多く、その過程で”データ”の意味を学んでいると思われます)
 
 
日本企業の生産性向上生き残りをかけて、一日も早い”データドリブン経営”の浸透を願ってやみません。

中小企業において目指すSecurity By Design

日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)の

中小企業において目指すSecurity By Design

を読みました。
中小企業では特に後回しにされがちな、ITシステムのセキュリティ機能は、今後ますます重要になります。セキュリティ対策の実装は後になればなるほどコストが指数関数的に増大するものです。是非設計段階からの導入をご検討ください。本ドキュメントはそのための考え方や対応方法の指針になると思います。

クラウドストレージ各社も“脱はんこ”に熱視線 Dropbox調査

クラウドストレージ各社も“脱はんこ”に熱視線 テレワークの課題は「押印・業務可視化」 Dropbox調査

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2011/25/news023.html

押印をなくす流れは以前からありましたが、コロナでそれが加速しました。押印には社外向けの押印と、社内向けの押印があります。社内向けの押印は、主に稟議等を誰が承認したかを確認し、記録を残すためのもので、これはワークフロー等のシステムに置き換わってきています。逆に言えば、ちゃんと社内で確認してお金の流れをコントロールするには、ワークフローシステムは大事ですよという意味です。

社外押印については、行政系の押印が格段に簡素化されそうで、これはうれしいですね。ただ、会社間の契約系の印鑑については、電子署名等への移行を進めることになります。これは、商取引全般での話なので、ちゃんと対応しないと他社との取引がスムーズにいかなくなりビジネスが滞ることになりますので、世の中の動きをちゃんと見定めて対応しましょう。(早ければいいわけではありません。早すぎるとコストが高くなることも多いので。ただ、遅れるとビジネスに支障が出ますので、その辺の見極めが大切です)

中小企業情報化塾(中情塾)について

中小企業診断士の村松といいます。この度中小企業情報化塾(通称”中情塾”)を開講しました。
この塾はオンライン上での情報交換・相談を通して、生産性向上につながる情報化を支援しようというものです。

世はDX(デジタルトランスフォーメーション)花盛りですが、長年システムインテグレーターとして多くのお客様の情報化を支援させていただくなかで、情報化はしたけれどかえって手間が増えたとか、生産性向上にはつながらない情報化のなんと多いことかと感じています。
日本の情報化の多くが”情報化”することが目的になっていたり、作業効率化を目的としているケースが多くあります。

情報化は目的ではありません。また、作業効率化は結局、全体としてやることが変わるわけではなく、人手が少なくなったり、スピードが速くなったりという効果であり、イノベーションとは言えません。効率化を否定するつもりは全くありませんが、情報化のコストと効果が見合わないと感じています。

私は、情報化の最大の効果は”見える化”だと思っています。多くのビジネスマンはPDCA(Plan,Do,Check,Action)が、いわゆる業務改善のポイントであることを知っています。世の多くのイノベージョンは、画期的なアイデアと高速PDCAの組み合わせであることも知られていると思います。しかし、PlanとDoは進むのですが、Checkがなかなか難しいのです。それは数字で定量的に見える化することが難しいケースが多いことが要因です。”情報化”とは、この”Doの結果を数値化して見える化し、高速PDCAを実現する”ことで、生産性向上をめざすのが一つの目的だと思っています。

また、画期的なアイデアは、現実を見つめ、比べることによってそのヒントが生まれます。数値化によって、”比べる”ことが行いやすくなり、イノベーションの誘発を促すというのがもう一つの”情報化”の効果だと私は考えています。

逆に言えば、そこまで考えて”情報化”を行わないと、なかなか成果が見えにくいということになり、”成果に結び付かない情報化にそんなにコストはかけられない”になってしまうのではないでしょうか?
わたしはこの塾を通じて、”真の生産性につながる情報化とは”を具体的な実例を積み上げ、それに至るプロセスを広めることで、中小企業の活性化に寄与できればと考えています。

人は情報量で判断する

人は受け取る情報の頻度で、重要度や信頼性、情報の量を無意識のうちに判断しています。
インターネット上のデマが、情報ソースは一つなのに、リツイートで拡散されて同じ情報が何度も違ったところから入ってくると、それを本当だと信じてしまうのはその一例でしょう。
この反応は本能的なものなので、自分自身に対しても有効です。つまり自分が達成したい目標を見えるところにいつも掲示したり、読み上げたりすることで、それが無意識に書き込まれ信じていくこともできるということです。
インターネットの恐ろしいところは、基本的に情報を自分で選択して取りに行くメディアなために、どうしても自分の意に沿った情報を取得することが多くなり、知らぬ間に偏った情報を信じてしまう傾向があることです。
情報化による情報のフィードバックも、意識して偏りをなくしていかないと、知らぬ間に偏った情報を信じてしまい、せっかく多様な情報を集めているにもかかわらず、誤った認識を信じてしまうことがあるので気を付けましょう。情報が多ければ正しい判断が下せるわけではないのです。

見える化のポイント

見える化のポイントは”見えにくいもの”を見えるようにすることで、状況を正確に把握したり、新しい気づきを得ることです。
例えば、売り上げは見えやすいですが、利益は経費の計算後でないと見えません。ビジネスが限定されていれば、過去の経験から利益を推定することは可能ですが、現在はあらゆる業種で、時価や最適費用、最安値などダイナミックに費用が変わる世の中です。このような中で利益をリアルタイムに正確にフィードバックするには、高度なデジタル化が必要になってくるのです。他にも”社員の活性度”、”顧客満足度”、”資産活用度”、”コミュニケーションレベル”など、これまでは定量化の困難だった様々なビジネス情報が、デジタル技術により定量的な見える化が可能になってきています。
こうした、見えにくいものを見える化することで、これまでにないPDCAを実現し、ビジネスをステップアップすることこそが”デジタルトランスフォーメーション”なのだと私は思います。